2010年6月2日水曜日

10年一昔

いらっしゃいませ、薬屋です。

顧客様が、日々いろんな相談ごとを持ち込まれる田舎の薬屋。

病院でもらった薬のことを訊きに来る人もいます。
通信販売で購入したサプリメントの相談に来る人もいます。
健康診断の結果を持って数値の説明を求めに来る人もいます。

開店当初から振り返れば、オレオレ詐欺のハガキを持って相談に来られる人もいれば、合併後の町議会議員選挙の情勢を探りに来る人もいれば、孫の進学相談に来れられ人もいました。

薬屋なのですが……。

薬屋が開業する前の1年間は、町に薬屋がない状態でした。
その前にあった薬種商さんが廃業され、薬屋が開業するまでの1年間です。

「こんな美味しい商圏はない」とばかりに、配置薬の業者さんが3社ほど町に入りました。
断りきれないご家庭では、3つの薬箱が置いてあるそうです。

先日、あるものが店に持ち込まれました。
とっくに解約し、訪問にも来なくなった配置薬です。

「胃がもっさーっとするんよ。飲もうと思って開けたんやけど、聞いてみようと思うて」
「胃がもっさーっとするんやね。これは下痢止めやから、飲まんでよかったわ」

個別包装を開封したところで、思い立って来店されたのが幸いした。

『配置期限 1994年8月』
個別包装にはそう記載されていました。

今年は2010年。
間違いなく2010年です。

高齢者の人たちの物持ちがいいのにもほどがあります。
でも、月日が経つのがご自身が感じているのよりも早いのでしょう。

10年一昔といいますが、人生の半分以上前のことでなければ『昔』ではない感覚も持っているようです。
80年生きてこられた人たちにとっては、15年前なんてほんの『この前』のことなのですよね。

ずいぶん前から入れ替えてない薬だから、期限が切れている。
悪くなっていたら困るから、もう飲まないように。
家に帰ったら、捨ててね。

そう言いましたが、何年先に捨てるやら……。
物を捨てることをもったいないと感じている人も多くいらっしゃいます。
戦争を経験し、物資不足の時代を生きてこられた人たちですから。

またのご来店をお待ちしております。

0 件のコメント:

コメントを投稿