いらっしゃいませ、薬屋です。
雨でお客様も来ないだろうと直感的に感じたある日、期日前投票に行ってきました。
ぶらぶらと帰ってきていると、店の前でお客様にばったり。
「いらっしゃいませ」
ドアを開けてのお出迎えのようでした。
「あー、良かった」
どうやら、薬屋薬剤師を指名のお客様です。
「目が充血したんよ! びっくりして来たんよ」
驚きようから察するに、充血じゃないな、と当たりをつけます。
白目に血の塊がある感じ……言い方は悪いですが、血豆の白目バージョンです。
「充血の目薬、ください」
お客様は、そうおっしゃいます。
「初めてなりましたか?」
「打ったりこすったりしませんでしたか?」
「痛みやかゆみはありませんか?」
「高血圧や糖尿病はありませんか?」
いろいろ尋ねてみましたが、何があったわけでもありません。
症状もありません。
鏡を見て初めて気づいたようです。
「目薬、いりませんよ」
そう言うと、不思議そうな顔をします。
そりゃそうでしょう。
薬屋に薬を買いに来て、「いりません」って薬屋が言うのですから。
疲れ目・充血の目薬に入っているのは、血管収縮剤。
充血は、毛細血管が広がり、血管の中にある血液の赤みで白目が赤くなります。
このお客様の『血豆』は、結膜下出血といって、血管が切れて流れ出た血です。
血管を収縮させても、赤みが引くわけではありません。
Wikipedia に、分かりやすい症例の写真が載っていました。
結膜下出血(Wikipedia)
「血管が切れて、血が溜まったんですよ。1週間から2週間ぐらいで、元に戻ります」
「え? 血管が切れたん。なんで?」
「原因は特にないんですよ。咳をしたり、トイレできばったり」
何度も繰り返したり、生活習慣病で血管が弱っていなければ、ほとんどの場合が問題のないものです。
出てしまった血液を吸収するのに、市販の目薬は必要ないことを話しました。
逆に、血管を収縮させないほうがいいです。
温めるように言う眼科医もいます。
放っておいてもいい状態なのに、薬は必要ありません。
雨の中、わざわざご来店いただいたのですが、そのままお帰りいただきました。
痛みやその他の違和感、異常があるようなら受診をするようにも、申し添えました。
情報提供はタダです。
不安を取り除くだけで、お客様の笑顔が得られます。
それが、薬屋薬剤師には対価となります。
またのご来店をお待ちしております。
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