2010年9月15日水曜日

排便

いらっしゃいませ、薬屋です。

シモの話です……。
排便に関する話です。
お食事中の人、苦手な人、引き返してください。


電話がかかってきました。
ご近所に住む声だけ聞いても分かる人からです。
彼女が名前を言う前から、「あ~、こんにちは!」で、会話が始まりました。

彼女は、ケアマネジャー(介護支援専門員)さん。
利用者さんのことでクスリ相談です。

「腸の蠕動運動を良くする薬はないか」というものでした。

5日も便が出ていない。
浣腸は時々使う。
ラキソベロン(便秘薬)を使うと腹痛。

利用者さんが処方されている薬のことも聞きたかったようです。

処方されているのは、カマグ(便を柔らかくする)、ガスモチン(胃腸の働きを良くする)、パントシン(ビタミンB5、高脂血症でも使うが、腸の動きが悪くなる弛緩性便秘でも使う)。

その薬の説明をして、市販薬の必要はないだろうと返事しました。

次に服用コンプライアンス(指示されたとおりに飲んでいるか)のチェック。
1日3回飲むと、便が漏れるように出る便失禁になり、皮膚がただれるため、「症状に応じて減量」している、とのこと。
減量の仕方が過激(?)だったので、まず便が出るまで処方されたとおりの量で服用することを勧めました。

薬剤師の仕事としては、そこまでかな、という感じです。
尋ねられたことに答えただけ。

調剤薬局や院内薬局でも、そこまでという薬剤師は多いと思います。

「水分摂取は?」
「水分ってどれぐらい取ったらええもんなん?」

相手は、ケアマネジャーです。
相談している人(利用者)は、おそらく高齢者、もしかしたら寝たきりの可能性もあります。

「食事は経口?」
「経口でもいけるけど、今は経管」
「無理やり飲ませても、可哀想やなぁ」
「そうなんよ。お腹がぷくーと膨れるようになるし」
「食後はコップ1杯ぐらいは必要かなぁ。あとは、少量でもこまめに」

軟便剤を飲んでいても、水分がなければ便は柔らかくなりません。
便秘のタイプはいろいろあること、薬の作用についても個人差が大きいこと、排便のサイクルも人それぞれ。
ご近所の年代の近い奥さんということもあって、タメグチで話していました。

そんな話をした上で、
「出るのと出ないのでは出るほうがいいからね。
でも、ご本人が嫌がったり痛がったりするのは、できれば避けたいね」

住む町とは離れた町でケアマネジャーをしている人です。
おそらく、病院薬剤師か調剤薬局に相談したあとだと思われます。
話の端々からそんな様子がうかがえました。

医療関係者は、治療効果のみに目が行きがちです。
福祉関係者は、本人や介護者のことを考えます。

少しだけでも、本人のことを考えられただろうか、と思いながら話をします。

処方どおりの量を服用して、便が出れば減量すること。
飲まなくするのではなく、1回量を減らすような減量をすること。
次回診療時に、処方通りの服用で起こること(便失禁や臀部のただれ)について話すこと。
便が出なければ病院で診てもらうこと。
皮膚のただれは感染症に注意すること。

そんなこと話して電話を置きました。

臨床の現場、福祉の現場、ましてや介護の現場は全く知りません。
看護学概論は1単位取ったけれど、その程度です。
介護福祉論は、2単位だけです。
祖父母や母の自宅介護には縁がありませんでした。
薬剤師としての臨床経験もありません。(現状では、店頭が最も臨床現場です)

一昔前の病院薬剤師は、調剤所に詰めているだけの存在でした。
薬学6年制にしたなら、医療現場に放り出せよ、と思っています。
4年制(調剤師という資格とか)+専門職大学院(臨床薬剤師 Pharm.D.)でいいと思います。

赤ちゃんの成長に比べ、高齢者の老化による機能の低下は個体差が大きいこと。
ましてや、意識やプライド、尊厳が赤ちゃんに比べてあるのが高齢者。
個別の事例に対応すること。
個々人を尊重すること。
それぞれの場面で適切な判断ができること。

『誰のために』にを明確にし、薬というモノよりも人を優先すること。

そんな薬剤師になりたいと思います。

またのご来店をお待ちしています。

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